2007年10月11日

『EDGE』

川本真琴
★★☆☆☆
■『川本真琴』5曲目
■ファン人気◇◇◇ ■ライブ頻度◆◇◇

退廃的でけだるい曲。珍しい。が、結果的に地味な印象はぬぐえない。

「名前くらいしかお互いを知らない」「あたしたち」は、あるいは『LOVE&LUNA』の「あたしたち」のもうひとつの結末なのかもしれない。

「冷蔵庫は〜」以下の描写の生々しさはこの曲のどの部分より印象的である。さわやかなはずの朝をこのように歌うこともできるのである。
同時に「退屈」「死体」が以降のイメージを喚起させていることに注意すべきである。

「気の利かない朝の光」が差し込んでも、彼女は「何としても今日も答え見つけず済まそう」としている。また「明日をぜんぶ取り上げられても」「まだ本当の使い方教わりたくない」ようである。

しかし「あたしたち」はもはや「世界の果て」=『EDGE』まで行き着いてしまったのではないか?
そしてそこでは「何も壊れない」はずはないのである。彼女も本当は気づいてるはずである。

夜のあいだは「ステキなスピードが次のページをめくってくれ」たのかもしれない。しかし「朝の光」が差し込んだ。もう「遠くまで」逃げることはできない。『俺たちに明日はない』のである。

「いつだっていつものあたしたちでいられるよね」
彼女は、「Bonnie」は「ほどけない憂鬱な身体に」「おやすみ」を告げた。「決められた宇宙で上手にダンスするのは」彼女にとってどこまでも「タブー」なのだ。

地味な印象の曲ではあるが、太陽であれ月であれ“生”のイメージがあふれる『川本真琴』のなかで、“死”を連想させるこの曲はやはり異様である。
ラベル:川本真琴 EDGE
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2007年09月27日

『STONE』

川本真琴
★★★☆☆
■『川本真琴』3曲目
■ファン人気◇◇◇ ■ライブ頻度◆◆◇

難解である。いつもより丁寧に整理してみよう。

まずはキーワード。
@閉塞感に満ちた「街」のイメージ=「しわくちゃになったNEWSPAPER〜」「POODLEMADAMは今夜もご機嫌〜」「みんなの店にはPINCHな仲間が〜」「SHOTで一杯やってる牧師が〜」
A脱出願望のイメージ=「BISCUITの屑みたいなCHANCEを〜」「新しい聖書〜」
Bその挫折のイメージ=「SCRAPになった車のKEYを〜」「ささくれが出来た親指を噛む癖が〜」「何度もCOINを数えてみてもTICKET一枚分」
そんな街の「呪い」で「君」は「仙人掌」(花言葉:内向きの心)になってしまう。

次に主題。
「見たこともない世界」。そのイメージは「子供達」「見上げてる」「SCREEN」。

その世界へのカギ「STRANGE STONE」。あるいは「僕らに埋められてる黒と白の2つの石」。
黒の石の妖精(?)は「眠れぬ憂鬱な黒いシッポの男の子」。
彼は「『何処にも行けないね・・・行けるよね』」と尋ねる。
白の石の妖精(?)はイタズラ好きそうな「白い羽つけた女の子」。
彼女は「『今夜で終わりなら何食べる?』」と尋ね「SCREENから舞い降りた」。
男の子のセリフも女の子のセリフも「街」から「見たこともない世界」への脱出を連想させる。実際「COUNT DOWN」「予言してる」とあり、その兆しが表れてる。

では「見たこともない世界」はどこにあるのか?
それは、この「街」の外ではなく、中にあるようである。そのことは「この街を2つに分ける大きな穴」や「鏡から」というイメージからうかがえる。

「一晩中考え」たあとの「朝」は、同じ「SCRAPになった5番街」の「朝」なのだが、どこか希望が差し始めている。
閉塞感の原因は「誰か」が「ぼくの記憶」をかじったためであり、その「誰かの右手と左手がいつもFAKE(=見せかける)してCLASH(=不一致)」「矛盾」させていたことに「僕たち」は否応なしに気づき始める。
「僕」の方は「黒いシッポ」が「育ってく」し、「見たこともない僕」が「僕を見ている」。
一方「君」が呟いたセリフの意味はお手上げ。。(『Do You〜』はCultureClubの代表曲だが、MAMAが出てくる意味が不明。アルバム曲の“ループ”による連想で『愛の才能』の主人公とも考えたが、全くテーマが異なるし、そもそも『愛の才能』で彼女は「一限」をサボらない。)


ラベル:川本真琴 Stone
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2007年09月13日

『10分前』

川本真琴
★☆☆☆☆
■『川本真琴』1曲目
■ファン人気◆◇◇ ■ライブ頻度◆◇◇

「地下鉄の階段いっことばし」や「ジェットコースターベルトしないで」といった描写は、地上の世界=現在の地点から次の地点へと躍動していくイメージが表れている。
次の地点とは「キスしてるかもしんない」「10分後」という“ちょっと素敵な次の瞬間”。その躍動は「こんな身体脱ぎ捨ててあたしが新しくなる」ことによって実現されていく。(この変身願望を女性の身体改造になぞらえたところにこの曲の妙味がある。)

現在の地点から“ちょっと素敵な次の瞬間”へ。ここには音楽活動の第一歩を踏み出した彼女の思いがみてとれる。
『ピカピカ』『ハート』においてもこの願望はなお歌い継がれる。そして事実、彼女は次々と「こんな身体脱ぎ捨てて」いくのである。
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2007年08月30日

『川本真琴』

川本真琴
■97年6月(23歳)■1stアルバム全10曲
■最高位1位(アルバム2枚中1番目)

川本真琴といわれて、このアルバムのジャケット写真を思い浮かべる人が多いのではないか。

『川本真琴』の歌詞カードにおいて、共通する「フォント」を曲順にたどっていくと、全体を通じて歌詞がループしていることに気づく。
(なお、『LOVE&LUNA』と『ひまわり』の間にはアルバム未収録の『1』を挟めば欠けていたピースがつながる。)
このカラクリは全くカラーが異なる10曲に緩やかな統一感を与えており、単なる遊び心を超えて見事な効果を上げている。
ただこの点については、それ以上の意味はないと筆者は考えているので、特に必要がない限り参照しない。


このアルバムの特徴を一言で言えば“密度の濃さ”であろう。

まず、歌詞の分量がやたら多い。歌詞カードを広げるとぎっしり活字が詰まっている。
さらに、歌詞の内容が練りこまれているから、ひとつひとつの言葉に無駄がない。

次に、音が多い。アコギを中心としてさまざまな楽器の音がひしめく。
(ただし、石川鉄男のアレンジはシングル曲ではかなりの切れ味をみせるにもかかわらず、それ以外の曲では別人のように退屈である。音が整理されていない。もっとも『やきそばパン』はかえってそれがツボにはまって神がかり的な出来栄えになっている。)

ところが、こうした濃さにもかかわらず、重く疲れることがないのは、やはり彼女の声の高さに負うところが大きいだろう。
この声の高さは(どこか舌足らずな)軽さでもある。
この軽さは速さと結びつく。
そしてこの速さはたくさんの歌詞や音を風のように引き連れていってしまう。(逆に速さが鈍ると、全体がもたつく。例えば『EDGE』の一部。)
こうした軽さ速さはリズムを伴うことによって、彼女独特の魅力を生み出す。『STONE』や『ひまわり』がいい例である。

なお、この軽さは後期になると徐々に消え、芯の通った安定感がある高さになるように思える。(『ハート』『微熱』『OCTOPUS THEATER』など)

ラベル:川本真琴
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2007年08月16日

『1』

川本真琴
★☆☆☆☆
■『1/2』B面 
■ファン人気◆◆◇ ■ライブ頻度◆◇◇

(※要修正)

『早退』に続いて、“仲間”がテーマ。しかし、その趣は異なる。

まず、「待ってる」に象徴されるような孤独のイメージが静かな曲調とともににじむ。

次に、
「息がとまるような星空」や
「呼吸をしている」「宇宙」に「近づけそう」な「夜」の下で、
明日を祈る。

「ないもの」が「いっぱい」で「うまくやれそうにない仲間たち」の、
「何も決」まっていない明日。

「今日が終わってもなんにもなくなりはしない」から、
「あたしたち」が「自分の歩幅で」進んでいけるように、祈る。


『1』とは孤独であるとともに、仲間たちへの祈りなのである。

さわれるものこわれるってこと 忘れたくない

ラベル:川本真琴
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2007年08月02日

『1/2』

川本真琴
★★★☆☆
■97年3月(23歳)■3rdシングル/『川本真琴』10曲目
■最高位2位(シングル9枚中1番目)
■ファン人気◆◆◆ ■ライブ頻度◆◇◇

『DNA』だけでは「懲りてない」。やはり吹っ切れていなかった。
出だしAメロ1からサビ1を経てAメロ2まで、これでもかと“例の願望”を一気にたたみかける。「ノストラダムスが〜」のくだりに至っては、一蓮托生・心中上等の覚悟にまで及んでいて、その強さは『DNA』を超えて疾走する。

だが、こうした願望はなにも特別な代物ではなかったのかもしれない。
「そっぽ見て待ってるから ポッケの迷ってる手で
 ほっぺに触れて 恋してるチカラに魔法をかけて」

かわいらしく韻を踏みながら、“女のコのキモチ”がストレートに歌い上げられ、サビは締めくくられる。

“成熟への戸惑い”は『DNA』のなかでなんとか受け入れることができた。
それが『1/2』では“強さへの憧憬”としてより積極的な態度になっている。
Bメロ2では「見えなくなるほど遠くにボールを投げれる」「おとこの子になりたかった」、「誰よりも強くなりたい」と歌う。

そんな憧憬のなかで主人公は「ちっちゃな頃みたい」に涙をこぼす。
このときもしかしたら「むかしママから教わった大事なオマジナイ」(『ピカピカ』)をそっと唱えたかもしれない。

「届かないって言われたってこのままジャンプしたい」積極的な態度は、ここに至って「最高の1cm」(『愛の才能』)の距離を超えたに違いない。

「ふたりで見てた一コの夕陽」。
“一体化願望”の表象としての「太陽」。
しかし、それが「ずっと沈まない」なんてことはかなわぬ願いである。
それでも一瞬の輝きを信じる主人公の強い思いは、いよいよクライマックスを迎えていく。
「神様」に翻弄されながら。


ラベル:川本真琴 1/2
posted by 鹿鱈 睦馬 at 23:17| Comment(3) | TrackBack(0) | 評論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月19日

『LOVE&LUNA』 

川本真琴
★★★★☆
■『DNA』B面/『川本真琴』8曲目 
■ファン人気◆◇◇ ■ライブ頻度◆◆◇

裏・川本真琴。倫理的な意味での『愛の才能』の欠落が“月”の女神=LUNAを生んだのか?
「すれちがっ」た『DNA』カップル、抜け出すべき「昼間の明かり」そして出て行ったまんまの「あの子猫」、いずれも“太陽”としての表・川本真琴の表象としてみることができる。

「カフェテリア」で「知り合ったあたしたち」の物語は、「首都高」を背景に「月」に照らされながら『キャラメル』そして『TOKYO EXPLOSION JP』へと引き継がれていったはずである。
そこで二人は、背徳の共犯者を超えて世界からの逃亡者になっていく。そこにはもはや恋愛の面影さえない。でもそれはまた別のお話。。


“LUNA”の世界はどこまでも即物的・刹那的である。
結婚は「ケッコン」にすぎない。
「愛」や「心」より、「感じ」あうこと「通じ」あうことの方が大切である。
「明日の情緒にわきまえ」るより、「恋宵の情緒にまぎれ」たいのである。
即物的・刹那的な関係は性的な関係と相性がいい。
「だんだん・・・・・・召されちゃいそうさ×2」
どこかエロッティックなサビ。官能的な“Love&Luna”という歌声。
永遠に成就できない一体化願望(=“太陽”的なるもの)は出口のない「ループ」な「損な場所」であり、それならいっそ「月も悪くない」のである。

「墜ちてく」「あたしたち」を歌うとき、夜を照らす妖しい光もまた必要ということであろうか。
そして表・川本真琴は「オソロイ」や「ニセモン」の世界なのか。

ラベル:川本真琴 LOVE&LUNA
posted by 鹿鱈 睦馬 at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 評論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月05日

『DNA』 

川本真琴
★★★☆☆
■96年10月(22歳)■2ndシングル/『川本真琴』4曲目
■最高位10位(シングル9枚中4番目)
■ファン人気◆◆◆ ■ライブ頻度◆◆◇

前期・川本真琴の人気曲の共通点は突き抜けた明るさと速さにある。
もっとも、『桜』や『ひまわり』が清清しい風景描写にもウェイトが置かれるのに対して、『DNA』や『1/2』は二人だけの世界観に閉じられた印象が強くやや趣を異にする。

歌詞の中に登場する事物は、青春に関するさまざまな比喩として聴くこともできる。
例えば「バス停」は青春の終焉と新しい旅立ちの比喩として。
「雨」「カーブ」「コーラ」なども想像してみると楽しい。
こうした表現を通じて浮かび上がるのは「変わってく」「育ってく」“成熟への戸惑い”=「なんで?」であろう。
これが、一つ目の重要テーマである。

二つ目の重要テーマが「身体なら1ッコでいいのに」という“一体化願望”である。
それは「他人同士だからこそ一緒にいられる」という理性に対置される「脳でなんかわかんない」衝動であり、ここに恋愛の宿命的な行き詰まりがある。
「D.N.A.」という主人公のアンビバレントな感情は、この越えられない壁に刻まれたいじらしい落書きなのである。

“成熟への戸惑い”そして“一体化願望”というやっかいな問題。
「眩暈の裸」を痛めながらも、主人公にはわずかな光が見え始める。
「ただそんなことでふたり つながれてる気がしてる」
さらに
「ひとりぼっちを交わして あたしをひらいて」
では“一体化願望”を克服したあたらしいかたちが芽生えている。

とはいえ、最後の最後で「他人だよね?」とつけ加え、頭ではわかっていても心ではやっぱり名残惜しいと歌うあたりが、憎らしい。


ラベル:川本真琴 DNA
posted by 鹿鱈 睦馬 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 評論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月21日

『早退』

川本真琴
★★☆☆☆
■『愛の才能』B面 
■ファン人気◆◇◇ ■ライブ頻度◆◇◇

彼女が作詞作曲。石川鉄男が編曲。以後『微熱』までこの体制。
『早退』は彼女の最初のライブツアー名となっているものの、『川本真琴』には収録されていない。たしかにクセのある曲である。

乾いた幼い歌声は、他の曲で聴くことはない。
“仲間”というテーマも珍しい。
「感じかた教わってもピンとこない」し「使い方わかんないこの気持にアセッて」る「ぼくたち」は、「揺れつづけ」「待ちつづけ」る。まわり続ける「古いレコード」や止まった「時計」のように。
そうした状況が“仲間”全体で共有されるものとして歌われているのが、他の曲では見られないこの曲の世界である。
ラベル:川本真琴 早退
posted by 鹿鱈 睦馬 at 17:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 評論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月07日

『愛の才能』

川本真琴
★★★☆☆(※鹿鱈睦馬の評価)
■96年5月(22歳)■デビューシングル/『川本真琴』2曲目
■最高位16位(シングル9枚中6番目)
■ファン人気◆◆◇ ■ライブ頻度◆◆◇

岡村靖幸がプロデュース・作曲・編曲・コーラス。
川本真琴が作詞・歌。
今みればとんでもない布陣である。天才と天才のコラボレーション。
そして、強烈なイントロは彼女の鮮烈なデビューを告げるファンファーレとしてふさわしい。(もちろんアルバムVer.の方)

歌声は、ハスキーな面がアダルトな印象をより強くしている一方で、舌足らずな面がかわいらしい印象も残している。
歌詞は、岡村が作ったメロディ・リズムにのせることに相当の意識をおいており、実際成功している。
また「あの娘・・・」「イケナイ・・・」「どぉ・・・」など、岡村の代表曲を連想させる部分も見受けられるが、たぶん偶然。

テーマは「あの娘にばれずに彼にもばれずにkissしよう」とする「イケナイ」二人。
欠けた「愛の才能」とは倫理的恋愛の才能ということか。

だが、ひとつ問題が残る。「友達じゃなくて恋人じゃなくて抱きしめたい」という不可解な願望の正体である。これは何か?
「忘らんない感触を欲しいの」「実感させて」「体で悟りたい」といったあからさまな身体の欲望とともに、「冷たい耳たぶそっと触れたいよ」「届かない」といったもどかしい心の渇望が漏れる。
こうした葛藤のなかには“一体化願望”の兆しがすでに表れているように思える。
そのことは「二人ぼっち」という響きからもうかがえる。
この不全感もまた「愛の才能ないの」という思いを強めているのかもしれない。

ところで、「『成長しない』」「約束」や「いつか遠くで知らない大人になる そんなアリガチ嫌だよ」においては“成熟への戸惑い”以前の“成熟への反感”が歌われていて、ここでも後のテーマが垣間見えて興味深い。
posted by 鹿鱈 睦馬 at 20:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 評論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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