■97年6月(23歳)■1stアルバム全10曲
■最高位1位(アルバム2枚中1番目)
川本真琴といわれて、このアルバムのジャケット写真を思い浮かべる人が多いのではないか。
『川本真琴』の歌詞カードにおいて、共通する「フォント」を曲順にたどっていくと、全体を通じて歌詞がループしていることに気づく。
(なお、『LOVE&LUNA』と『ひまわり』の間にはアルバム未収録の『1』を挟めば欠けていたピースがつながる。)
このカラクリは全くカラーが異なる10曲に緩やかな統一感を与えており、単なる遊び心を超えて見事な効果を上げている。
ただこの点については、それ以上の意味はないと筆者は考えているので、特に必要がない限り参照しない。
このアルバムの特徴を一言で言えば“密度の濃さ”であろう。
まず、歌詞の分量がやたら多い。歌詞カードを広げるとぎっしり活字が詰まっている。
さらに、歌詞の内容が練りこまれているから、ひとつひとつの言葉に無駄がない。
次に、音が多い。アコギを中心としてさまざまな楽器の音がひしめく。
(ただし、石川鉄男のアレンジはシングル曲ではかなりの切れ味をみせるにもかかわらず、それ以外の曲では別人のように退屈である。音が整理されていない。もっとも『やきそばパン』はかえってそれがツボにはまって神がかり的な出来栄えになっている。)
ところが、こうした濃さにもかかわらず、重く疲れることがないのは、やはり彼女の声の高さに負うところが大きいだろう。
この声の高さは(どこか舌足らずな)軽さでもある。
この軽さは速さと結びつく。
そしてこの速さはたくさんの歌詞や音を風のように引き連れていってしまう。(逆に速さが鈍ると、全体がもたつく。例えば『EDGE』の一部。)
こうした軽さ速さはリズムを伴うことによって、彼女独特の魅力を生み出す。『STONE』や『ひまわり』がいい例である。
なお、この軽さは後期になると徐々に消え、芯の通った安定感がある高さになるように思える。(『ハート』『微熱』『OCTOPUS THEATER』など)
ラベル:川本真琴